目次
はじめに
髪の毛の悩みは男性、女性を問わず多くの方が抱えている大きな問題だと思われます。最近はSNSの普及もあり情報が手に入れやすい一方で、毛髪についての間違った情報も多く見受けられます。薄毛だからといって考えなしにAGAやFAGAの治療をするのではなく、まず薄毛の原因となる脱毛症をしっかり特定してからその脱毛症に対する治療をすることが必要です。正しい情報を知らないと将来のご自身の髪の毛にも、また金銭的にも不利益を講じてしまう事があります。
日本臨床毛髪学会は毛髪に関する正しい医療知識を提供します。
- その治療は本当に自分に必要なのか?
- その治療は正しい治療なのか?
- 治療の費用は適切なのか?
良く考えてから治療を選択するようにしてください。
オンライン診療について
オンライン診療は日本全国どこでも手軽に毛髪治療が受けられる一方で、十分な説明や診察がない、誤診や治療効果の確認不足などといった問題もあります。実際に、オンライン診療を受けた際に、保険治療ができる円形脱毛症を見逃されAGAだと誤診された例が数多く報告されています。またオンライン診療では写真などによる評価が不十分なため治療の効果がわかりにくく、効果を実感できずに治療を止めてしまう方も多くいます。オンライン診療に限りませんが、医師による十分な診察と説明を受けることが大事です。
そのほかにも、
- 医師以外のカウンセラーなどがオンライン診療・薬の処方を行っている例。
- 初回のみ医師がオンライン診療を行い、以降は無診察で薬の処方などが行われている例。
などといった「無診察診療」については医師法違反事例として厚生労働省が注意喚起をしています。手軽に毛髪診療が受けられるのは良いことですが、手抜き診療が行われている可能性も否定できませんので十分にご注意ください。
無診察診療、高額治療請求について
最近、毛髪治療を含めた自費診療について、医師が診察を行わずにカウンセラーなどが説明を主導する「無診察診療」や、その場で高額な治療の契約を迫る「高額治療請求」などによるトラブルが多発し、厚生労働省でも大きな問題とされています。
- 医師以外のカウンセラーなどがオンライン診療・薬の処方を行っている例。
- 医師以外のカウンセラーなどが実質的に治療内容の決定を行っている例。
- 初回のみ医師がオンライン診療を行い、以降は無診察で薬の処方などが行われている例。
などは医師法違反である「無診察診療」として厚生労働省が注意喚起しています。
そのほかにも、
- 標準的な治療だけでは効果が弱いので、追加の治療もしないと治らない。
- 1年治療契約をしたら〇〇%割引、今日中に契約したら安くなるキャンペーン。
などといった高額追加治療、年間契約、その場で契約を強く勧められるようなトラブルも数多く消費生活センターに寄せられています。男性型脱毛症(AGA)や女性薄毛治療の大半は健康保険の利かない自由診療であり、美容医療の一部に含まれます。ぜひ一度冷静になって、厚生労働省の注意喚起を確認してみてください。
「確認してください!美容医療を受ける前にもう一度」厚生労働省
Q&A
Q. AGA治療はいつごろから良くなりますか?
A. フィナステリド単独の治療では毛が増えた感じになるのは早くても6か月目、平均すると12か月目頃まで待つ必要があり、以降1年目、2年目と年単位でゆっくり髪の毛が太くなっていきます。ただ、毛量の変化はご自身では気づかないことが多く、効果を実感できない方も少なくありません。生え際の産毛やつむじなどがはっきりと写る写真を撮って比べると改善効果が実感しやすくなります。
Q. フィナステリドで男性機能の副作用が心配です。
A.
フィナステリド内服治療で男性ホルモン(テストステロン)は減るどころか、むしろ増えると報告されています。フィナステリド、デュタステリドの作用として、AGAの直接原因であるDHTが減ることで身体の調整機能(フィードバック)が働き若干ですがテストステロンが増えると考えられます。
フィナステリドの副作用にED(勃起障害)の報告は確かにありますが、その発生率は0.2%と報告されていて日本人男性の自然なED発生率よりも低い数字であり、薬が影響してEDが発生したわけではない、思い込みによる影響が大きいのではないか、と海外の研究でも報告されています。
またAGA治療のフィナステリド容量では精子数などに影響はないと報告されていますので、よほどの男性不妊症でない限りは妊活にも影響しないと考えられています。
Q. フィナステリドは止める薬、ミノキシジルは生える薬、と良く言われるけど、ミノキシジルを追加しないと髪は増えないんですか?
A.
両者ともAGAで短くなった成長期の長さを延ばします。つまり、それまで毛周期が短くて細い毛にしかならなかったのが、毛周期が延びることで太い毛にまで成長して毛周期を回転するようになります。毛周期が長くなれば1日の抜け毛は減って、毛量は増加していきます。
フィナステリドの改善効果は年単位でゆっくり改善するので、時間をかけて産毛が増えるような改善効果に気づかない方が多いのは確かです。クリニックなどで写真を撮って比べると効果が実感しやすくなります。
ミノキシジルの特徴としては併用すると比較的早く(3-6か月程度から)改善効果が表れることが多いので、薄毛を早く改善させたい方、効果を実感したい方、年単位のフィナステリド治療で効果が不十分な方、などが希望に応じて追加する薬です。
Q. AGA治療をしても抜け毛が減りません。
A. 毛周期が長くなれば抜け毛は減りますが、なかなか実感するのは難しいです。早い人で2−3ヶ月目に抜け毛の減少を自覚する方もいますが、むしろ少数です。そもそもフィナステリドは抜け毛を減らす効果を主目的とする薬ではありません。AGA治療では毛周期が長くなるので、細くなってしまった毛が太く回復していきます。抜け毛は下から新しい太い毛が生えてくることによって生じる「新陳代謝」です。AGA治療後もある程度の抜け毛はありますが、正常範囲(1日100本以内)なら問題ありません。また生理現象として、夏から秋前後にはさらに抜け毛が増えることもあります。AGA治療は抜け毛があっても毛の量は増えてくる治療、と考えてください。
Q. 男性ホルモンが多いとAGAになりやすいのですか?
A.
AGAの直接原因は男性ホルモン(テストステロン)ではなくDHT(ジヒドロテストステロン)ですが、テストステロンやDHTが多いからAGAになるというわけではありません。AGAになる、ならない、は毛乳頭のDHTの感受性(効きやすさ)や機能のしかたに左右されます。これらの違いは遺伝子のタイプ(言い換えれば体質)によるものです。
筋肉トレーニングや自慰行為などで男性ホルモンが増えたとしてもAGAになりやすくなるわけではありませんし、逆に行動を制限して男性ホルモンを低く抑えたとしてもAGAにならないわけではありません。
Q. 海外製の薬でも効果は同じですか?
A. 海外製の薬には偽物が含まれている、と厚生労働省から注意喚起を含めて報告されています。
「あやしいヤクブツ連絡ネット」厚生労働省
実際に海外製品を飲んでいてAGAが進行した症例や、有害物質による健康被害の報告もあります。将来の髪の毛のためにも国内承認薬品、ジェネリック薬品、をお勧めいたします。
(ジェネリック薬品とは日本の厚生労働省、PMDAが承認した国内製造薬品のことなので「海外ジェネリック」というものは存在しません)
Q. 頭皮マッサージをした方が良いですか?
A. マッサージでAGAや薄毛は治りません。場合によってはマッサージの刺激により弱って細くなった毛根がダメージを受ける可能性や、手指の雑菌による皮膚トラブル(ニキビ、かゆみ)の原因にもなりかねません。シャンプーの際にゴシゴシ洗うような強い刺激も控えた方が良いでしょう。
Q. 毛髪の再生医療って効果あるんですか?
A. 再生医療に関連した治療は十分に安全性と有効性が検証されていないことからガイドライン上では「推奨度:D(行わない方が良い)」とされています。一部の注射製剤の研究で毛髪に対する効果が確認されているものもあり研究もおこなわれていますが、今現在ガイドラインで推奨されている治療の効果を上回るものはありません。費用も高額になることが多いので効果と安全性、費用についても十分に検討するようにしてください。