男性型脱毛症(AGA)について
東京メモリアルクリニック 栁澤正之
男性の薄毛の多くを占める男性型脱毛症(AGA)は思春期以降に生え際(M字部分など)から頭頂部(つむじ)にかけて頭髪が細くなり薄毛が進行していくのが特徴です。(下図参照)AGAはすでに原因が解明されていて、明確に改善する治療薬が開発されて20年以上が経っています。早期から治療を開始すればほとんどの男性はAGAによる薄毛は進行せずに済むと考えられています。
AGAの原因
AGAの原因として男性ホルモン(テストステロン)を思い浮かべる方が多いと思いますが、正確には男性ホルモンから作られるDHT(ジヒドロテストステロン)という物質がAGAの直接原因になります。DHTが毛乳頭細胞(毛根)に作用して毛周期を短縮することで毛が細く短くしか成長しなくなり、薄毛が進行することが分かっています。
フィナステリド・デュタステリド
AGAの治療薬としてフィナステリド(プロペシア®)が1997年にアメリカで認可され、2005年には日本の厚生労働省でも認可されAGAの根本的な治療が始まりました。同様にデュタステリドは2015年に厚生労働省でAGA治療薬として認可されました。どちらも5α還元酵素を阻害しDHT産生を止める作用があり、AGAの進行予防効果だけでなく毛周期改善によるAGA薄毛の明確な改善効果が証明されています。
ミノキシジル外用剤
ミノキシジル外用剤(リアップ®など)は髪の毛を太くする効果があり、男性だけでなく女性の薄毛治療にも使われます。AGAについては進行が強く基本治療だけでは思ったほど改善しない場合に追加する治療です。ミノキシジルだけを使ってもAGAの原因であるDHTは止められないので基本的にはフィナステリド・デュタステリドに追加して使う治療になります。
植毛手術
植毛手術も世界中で行われている薄毛治療法の一つですが、技術不足な施術や医師不在の手術などによる被害も多発しており、国際学会でも植毛手術のブラックマーケットとして大きな問題になっています。
- カウンセラーの説明だけで、医師の説明、診察がほとんどない。
- キャンペーン価格や当日の契約を強く勧められる。
このような営業的勧誘は厚生労働省が注意喚起しているように適切な医療とは言えません。患者さんが初めて受診したクリニックで技術的なことを評価するのは大変難しいですが、このような点に注意しながら信頼できる医師と十分に相談したうえで手術を検討するようにしてください。
脱毛症診療ガイドライン
日本皮膚科学会において「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」が一般公開されています。
円形脱毛症についても同様に「円形脱毛症診療ガイドライン」があり、分類や治療法等詳しく調べることができます。
その他の治療についてはガイドラインを確認したうえで、またガイドラインに記載されていない治療については本当に有効な治療なのか、本当に必要な治療なのか、慎重に検討したうえで実施するように十分注意してください。
その他の治療について
毛髪の効果を謳って、ガイドラインで推奨されていない、もしくはガイドラインで検討すらされていないような治療法がいくつも存在します。
具体的な例として、
- 標準的な治療だけでは効果が弱いので、追加の治療もしないと治らない。
- 1年間の治療契約をしたら〇〇%割引、今日中に契約したら安くなるキャンペーン。
このような営業的勧誘は厚生労働省が注意喚起しているように適切な医療とは言えず、どちらかと言えば営利目的の抱き合わせ商法と思った方が良いでしょう。毛髪の治療には時間がかかる事が多く、裏を返せば高額な費用を払ったからと言って早く良くなるような都合の良いものはありません。数年から10年先を見据えた治療を考えることも大事です。